国語辞典にみる女性差別
理事長 五十嵐教行
表題は、『国語辞典にみる女性差別』という本のタイトルである。ことばと女を考える会が1985年に三一書房から出版した本で、女性に関する言葉を国語辞典はどういう風に差別的に説明しているのかといった内容の本なのである。
この本には、問題の原点の章と題する序があって、最初に「うまずめ」の言葉の説明から始まる。「うまずめ(石女)」とは、何か。この本では、「岩波国語辞典」での説明-「妊娠する能力がない女。子が産めない女。」を載せ、ならば、男性側に問題があって妊娠しない場合もあるのだから、そのときの男性をなんと呼ぶのか、という疑問が出てきて、「うまずめ」と対になった言葉を探してみたが見当たらなかったというのである。さらに、「妊娠する能力がない女」という説明に対して、確かにその通りだが、しかしなんだか冷たい感じがする、子どもが欲しくてもなかなか妊娠しない女性が読んだらいい気持はしないだろうなどとも述べている。
なるほど、確かにそう言われれば、妊娠させられない男のことを何と呼ぶのか私は知らない。「岩波国語辞典」のこの言葉の執筆者は、妊娠しない女性のことを決して尊重はしておらず、むしろ軽視しているのではないかと思えてくる。
そこで、私も自分の持っている広辞苑(第4版)で、男女の言葉について調べてみた。こんな事をはっきり言ってしまっても大丈夫なのかと心配するくらいの内容のものもあったので、若干紹介してみたい。
- 「男勝り」
- 女でありながら、気性が男にも勝るほどに勝ち気であること。
- 「男は度胸、女は愛嬌」
- 男女それぞれに必要に特性を対句的に言ったことば。
- 「女の一念岩をも通す」
- 女は弱いようだが執念の強いことのたとえ。
- 「女の腐ったよう」
- 柔弱で煮え切らない性質の男の形容
- 「女の知恵は後ろへ回る」
- 女は知恵のまわりがおそく、事が終わってから出る。
私たちが使う日本語は、女性を男性よりも低くみていたのだなぁとつくづく感じさせられた。ところでこの「うまずめ」という言葉は、私が日本福祉大学に入学した時に最初に教えられた言葉で、とても私には印象深い言葉の一つなのである。その先生は黒板に「石女」と書き、何と読むのか知っているかと学生に質問し、この言葉に込められた意味を日本の歴史や文化に触れながら説明してくれたのである。
あらためて、無意識のうちに存在している自分の差別的な価値観に意識を向けていきたいと思う。