巻頭言
ふるさと納税の返礼品は、“カタログショッピング”みたいで楽しいけど
ふるさと納税とは何か。厳密には寄付の一種で、日本の税制の寄付金控除を活用した制度である。「今は都会に住んでいても、自分を育んでくれた「ふるさと」に、自分の意思で、いくらかでも納税できる制度があっても良いのではないか(「ふるさと納税研究会」報告書より)」という問題提起をもとに生まれた制度で、過疎などにより税収が減少した地域と都市部との地域間格差の是正を目的としている。確かに大都市で暮らす人の中には、地方の町で育ち、進学や就職をきっかけにして大都市へ移り住んだ人があまたいる。自分の故郷である自治体に何らかの恩返しをしたいと感じている人もまた多くいるのだろう。繰り返しになるが、ふるさと納税は「生まれ育ったふるさとに貢献できる制度」であるほか、「自分の意思で応援したい自治体を選ぶことができる制度」なのだ。
ところで、選んだ自治体に寄付をすると、そのお礼として地域の特産品などが送られてくる。ご存知の人は多いだろう。ネットで検索すると、人気返礼品ランキングや返礼品一覧、さらに自治体名やカテゴリ等で絞り込んで返礼品の検索ができるサイトが複数ヒットする。それらのサイトを開くと、寄付金額と返礼品がカテゴリー別の一覧表になっているので、ついついお得感満載のブツを探そうとしてしまう。そして返礼品をカートに入れ、必要情報を入力して決済を済ます。それで全ての申し込みは終わってしまう。手続きが実に簡単だ。まるで、カタログショッピングを楽しんでいるかのような錯覚に陥るのだ。
ちなみに、令和4年度の自治体別ふるさと納税の寄付金額ランキングベスト5は次の通りで、ちなみに2位から4位は北海道だ。
1位:宮崎県都城市
2位:紋別市
3位:根室市
4位:白糠町
5位:大阪府泉佐野市
人気の返礼品のランキングは、1位肉類、2位魚介類、3位お米、4位果物類となり、約9割が食品や飲料品だ。
今後は、自治体が取り組んでいる施策や取り組もうとしている計画が重要になってくると筆者は考える。ふるさと納税をした人たちは、寄付した先の自治体の動向が気になるからだ。キッカケは欲しかった返礼品だったかもしれないが、その返礼品が気に入れば次回も寄付しようとするだろう。それはすなわち、その自治体にがんばってほしいという思いが根底にあるからだ。応援する気持ちが強くなっている。ゆえに、各自治体も我が自治体に多くの寄付をしてもらうために施策や計画に力を入れていくことだろう。もしかしたら、従来の施策の拡充やアイデアたっぷりの計画立案など、各自治体による国民へのアピール合戦も含んだ自治体間での競争がすでに密かに水面下で起きているかもしれない。
それにしても、各自治体が用意している返礼品は実に多種多様だ。自分の地域の特性をそれらの返礼品に込めようとしているだろうし、地域住民の願いも込められているのではないかと考える。ふるさとを持たない大都市で育った友人はこう言う。「私には田舎というふるさとがないので、ふるさとがある人がうらやましいよ。だからふるさと納税を通して、自分のふるさとをつくりたいと思っているのサ」と。