もしも100人の村だったら…
理事長 五十嵐教行
「30人が子どもで、70人が大人です。そのうち7人がお年寄りです」という文章は、2年ほど前にブームになった『世界がもし100人の村だったら』の本の中の2番目にでてくる文章です。この本のことは多くのみなさんはご存知のことでしょう。世界を100人の村にしてみるとどうなるか、単純化してみることでこれまで気づかなかったことが見えてきます。それもわかりやすく。この本が日本で出版された後、今度は「ダカーポ」という雑誌で、‘日本がもし1000人の町だったら’という特集が組まれました。これらの本や雑誌、最新の『厚生労働白書』などから、世界村と日本村の事情を少し見ていくことにしましょう。
冒頭で掲げた文章では、お年寄りが7人いるわけですから、世界村は「高齢化社会(7%以上)」であることがわかります。日本村ではどうかと言いますと、「5人は4歳以下の子どもで、19人が65歳以上のお年寄り」であります。日本村は平成7年から「高齢社会(14%以上)」となっており、イギリスやフランス、ドイツなども「高齢社会」となっていますが、日本村の首相が大好きなアメリカではまだ「高齢社会」にはなってはおりません。
日本村では27秒に1人が生まれ、32秒に1人が死んでいます。死因の第1位は「悪性新生物」、第2位は「心疾患」、第3位は「脳血管疾患」となっていますが、この死因の順位については見過ごせない事実があります。それは「老衰(第7位)」よりも「自殺(第6位)」の方が死因順位が高いということです。日本村では、「3人には働きたくても仕事がない」状況で、「この先暮らしが良くなっていると思っている人は5人しかいません」。そんな日本村ですが、50年後には80人に減ってしまいます。子どもが11人でお年寄りは36人となり、すっかりお年寄りの村になってしまいます。
世界村ではどうなっているでしょうか。「1年の間に、村では1人が亡くなりますが、1年に2人の赤ちゃんが生まれるので、来年は101人になる」のです。そんな世界村では「すべてのエネルギーのうち、20人が80%を使い、残りの80人が20%を分け合っている」のです。
さらに「75人は食べ物の蓄えがあり、雨露をしのぐところがありますが、あとの25人はそうではありません」。そのうえ「17人はきれいで安全な水を飲むことができません」。「村人のうち1人が大学の教育を受け、2人がコンピューターを持っています。けれど14人は文字が読めません」。ちなみに日本村では「高校を卒業したのが1人で、2人が大学生」です。
「もしもあなたが、空爆や襲撃や地雷による殺戮や武装集団のレイプや拉致におびえていなければ、そうでない20人より恵まれています」。
「もしもあなたが冷蔵庫に食べ物があり、着る服があり、頭の上には天井があり、寝る場所があるなら、そうでない75人より裕福です」。
この巻頭言は、クーラーの効いた書斎で書きました。私は恵まれています。
【参考文献】
- 『世界がもし100人の村だったら』、マガジンハウス、2001
- 「日本がもし1000人の町だったら」、『ダカーポ』VOL485、マガジンハウス、2002
- 『厚生労働白書平成15年版』、ぎょうせい、2003
- 『国民福祉の動向2003』、厚生統計協会、2003